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【企業向け】副業を認める就業規則の作り方|必須項目と注意点を社労士が解説

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【企業向け】副業を認める就業規則の作り方|必須項目と注意点を社労士が解説

副業を認める企業が増加傾向にあります。
従業員のスキルアップやモチベーション向上に繋がる一方で、企業としては就業規則の見直しや労務管理など、対応すべき課題も存在します。
そこで今回は、副業を認める就業規則を作成する上で、企業が絶対に抑えるべきポイントについて解説します。
中小企業の経営者の方々にとって、副業解禁を成功させるための一助となれば幸いです。

副業を認める就業規則の重要ポイント

副業容認の現状と企業側の意識

近年、働き方の多様化が進み、副業を容認する企業が増加しています。
厚生労働省が公開しているモデル就業規則から副業禁止の規定が削除されたことも、この流れを後押ししています。
企業側の意識としても、優秀な人材の確保や従業員のスキルアップ、モチベーション向上といったメリットが認識され始めています。
しかし、副業を容認するにあたっては、就業規則の見直しや労務管理体制の整備が不可欠です。

就業規則改定の必要性とは

副業を容認する場合、従来の就業規則では対応できないケースが多々あります。
例えば、労働時間の通算や競業避止義務、情報漏洩対策など、副業を行う上で企業と従業員双方に課せられる責任や義務を明確にする必要があります。

就業規則を改定せずに副業を認めてしまうと、後々労務トラブルに発展する可能性も否定できません。
副業を円滑に進めるためには、就業規則の改定は必要不可欠なプロセスと言えるでしょう。
常時10人以上の従業員を使用する事業場では、労働基準法第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています(就業規則を変更する場合も同様に、届出が必要です)。

規則策定前に確認すべきこと

就業規則を策定する前に、まずは自社の状況を十分に把握する必要があります。

1.従業員のニーズや希望をヒアリングし、副業に対する意向を把握する。
2.どのような副業を容認するか、業種や時間、業務内容などを具体的に検討する。
3.副業によって発生する可能性のあるリスクを洗い出し、対策を講じる。
4.労働組合がある場合は、事前に協議を行い、合意を得る。

これらの準備をしっかりと行うことで、より実効性のある就業規則を策定することができます。

就業規則に盛り込むべき必須項目

副業許可の条件と範囲を明確化

副業を許可する条件と範囲を明確に定めることは、トラブルを未然に防ぐために非常に重要です。
例えば、以下のような項目を具体的に定める必要があります。

・副業の時間制限(例:週20時間以内、本業に支障がない範囲)
・競業避止義務(自社の事業と競合する副業の禁止)
・情報漏洩の禁止(副業で知り得た情報の不正利用の禁止)
・会社の信用を損なう行為の禁止

これらの条件を明確にすることで、従業員は安心して副業に取り組むことができ、企業はリスクを最小限に抑えることができます。

届出手続きと承認フローの整備

従業員が副業を行う際には、事前に会社に届け出る手続きを整備する必要があります。
届出書には、副業の内容、時間、場所、業務内容などを記載させ、会社が承認するかどうかを判断するフローを確立します。
届出を義務付けることで、会社は従業員の副業状況を把握し、労働時間管理や安全配慮義務を適切に履行することができます。
厚生労働省のウェブサイトでは、副業・兼業に関する届出様式例が公開されており、参考にすることができます。

労働時間管理と安全配慮義務

副業を行う従業員の労働時間管理は、企業にとって重要な課題です。
労働基準法に基づき、従業員の労働時間は本業と副業を通算して管理する必要があります。
例えば、契約上の労働時間が本業で6時間勤務した従業員が、同日に副業で3時間働いた場合、合計労働時間は9時間となり、法定労働時間(1日8時間)を超える1時間分については、割増賃金の支払い義務が発生します。
この割増賃金は、原則として後から労働契約を締結した企業(この場合は副業先の企業)が支払うことになります。

しかし、実務上はどちらの企業がどのように管理し、支払うのかなど、複雑な問題が伴います。
そのため、副業を認める際には、あらかじめ労働時間の申告方法や管理のルールを明確に定めておくことが不可欠です。
また、企業には従業員の健康と安全に配慮する「安全配慮義務」があります。長時間労働による健康障害を防ぐため、従業員の総労働時間を把握し、健康状態にも注意を払う必要があります。

副業を認めることのメリットと注意点

企業が得られるメリットとは

副業を認めることで、企業は以下のようなメリットを得ることができます。

・優秀な人材の確保
副業を認める企業は、従業員の多様な働き方を尊重する企業として、求職者からの評価が高まります。

・従業員のスキルアップ
副業を通じて、従業員は新たなスキルや知識を習得し、本業にも活かすことができます。

・従業員のモチベーション向上
副業によって収入が増えることで、従業員のモチベーションが向上し、生産性の向上に繋がります。

・企業文化の活性化
副業を通じて、従業員は社外の知識や経験を持ち帰り、企業文化の活性化に貢献します。

従業員のメリットとモチベーション

従業員にとって、副業は以下のようなメリットをもたらします。

・収入の増加
副業によって、生活費や趣味、スキルアップのための資金を確保することができます。

・スキルアップ
副業を通じて、新たなスキルや知識を習得し、キャリアアップに繋げることができます。

・自己実現
副業を通じて、自分の興味や関心のある分野で活躍し、自己実現を追求することができます。

・キャリアの多様化
副業を通じて、将来のキャリアプランを多様化させることができます。
これらのメリットは、従業員のモチベーション向上に繋がり、企業全体の活性化にも貢献します。

企業が注意すべきリスクと対策

副業を認めるにあたっては、企業が注意すべきリスクも存在します。

・情報漏洩:副業を通じて、企業の機密情報が漏洩するリスクがあります。
・競業:従業員が競合他社で副業を行い、自社の利益を損なうリスクがあります。
・長時間労働:副業によって、従業員の労働時間が過剰になり、健康を害するリスクがあります。
・労務管理の複雑化:副業を行う従業員の労務管理が複雑化し、ミスが発生するリスクがあります。

これらのリスクに対して、企業は以下のような対策を講じる必要があります。
・秘密保持契約の締結:従業員と秘密保持契約を締結し、情報漏洩を防止する。
・競業避止義務の明確化:就業規則に競業避止義務を明記し、競合他社での副業を禁止する。
・労働時間管理の徹底:副業を行う従業員の労働時間を正確に把握し、過重労働を防止する。
・労務管理システムの導入:副業を行う従業員の労務管理を効率化するためのシステムを導入する。

これらの対策を講じることで、企業はリスクを最小限に抑えながら、副業を認めることができます。

まとめ

副業を認める就業規則を作成する上で、企業は副業許可の条件と範囲の明確化、届出手続きと承認フローの整備、労働時間管理と安全配慮義務を徹底する必要があります。
副業を認めることは、企業にとって優秀な人材の確保や従業員のスキルアップ、モチベーション向上といったメリットをもたらす一方で、情報漏洩や競業、長時間労働といったリスクも伴います。
これらのリスクに対して適切な対策を講じることで、企業は副業を円滑に進め、持続的な成長に繋げることができます。

副業に関する就業規則の作成や見直しは、法的な知識と実務的なノウハウが求められる複雑な作業です。
自社に合ったルール作りや、運用上のリスク管理についてお悩みの際は、専門家である社会保険労務士にご相談ください。
長野県諏訪地域をはじめ、周辺エリアの中小企業の皆様を、諏訪労務管理センターが丁寧にサポートいたします。

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