事業活動の縮小を余儀なくされた際、従業員の雇用を維持するためのセーフティネットとして「雇用調整助成金」の活用が注目されています。
かつてのコロナ特例期間とは異なり、現在の通常制度では手続きや要件が厳格化されており、正しい知識に基づいた運用が不可欠です。
今回は、2025年時点の雇用調整助成金の支給フローや、申請における重要な条件について解説していきます。
雇用調整助成金の申請・支給フロー
「計画」から「支給」までの流れ
雇用調整助成金は、会社が従業員に休業手当を支払った後に、その費用の一部を国が助成する「償還払い」の制度です。
支給までの基本的なフローは以下の通りです。
- 計画作成・提出:休業開始の「前日」までに計画届を労働局へ提出
- 休業の実施:計画に基づき休業させ、従業員へ休業手当を支払う
- 支給申請:判定期間(賃金締切期間)終了後、2ヶ月以内に申請を行う
- 審査・支給:労働局の審査を経て、事業主の口座へ振り込まれる
「事前の計画届」が必須
現在最も注意すべき点は、休業を開始する前に「休業等実施計画届」を提出しなければならないことです。
過去の特例措置では事後提出が認められていましたが、現在は事前の届出がない場合、助成金の対象となりません。翌月の生産計画やシフトを早期に確定させ、計画的に手続きを進める必要があります。
申請から着金までのタイムラグ
申請書を提出してから支給決定・振込がなされるまでは、通常数週間から数ヶ月を要します。
企業はまず自己資金で休業手当を全額従業員に支払う必要があるため、助成金が入金されるまでのキャッシュフロー(資金繰り)の管理が極めて重要となります。

支給・不支給を分ける重要条件
厳格化された「生産指標」要件
助成金を受給するためには、客観的な数値で経営悪化を証明する必要があります。
具体的には、売上高や生産量などの生産指標が「最近3か月間の月平均値」で、前年同期と比較して10%以上減少していることが条件です。
「仕事が減った感覚がある」だけでは認められず、試算表や売上帳などの根拠資料の提出が求められます。
クーリング期間(待機期間)の存在
過去に雇用調整助成金を受給していた企業が再度申請する場合、「クーリング期間」の確認が必要です。
前の支給対象期間が満了した日の翌日から起算して満1年間を経過していない場合、新たな受給はできません。
これにより、恒常的に助成金に依存するのではなく、事業の立て直しや自立が求められる仕組みとなっています。
「残業相殺」による支給額減額
同じ期間内に「休業」と「残業(所定外労働)」が混在している場合、助成金額が調整されます。
具体的には、従業員が行った残業時間分を休業時間から差し引いて助成額を計算する「残業相殺」が行われます。
「忙しい部署は残業させ、暇な部署は休業させる」といったケースでは、結果的に助成金が減額される、あるいはほとんど受け取れない可能性があるため注意が必要です。

助成内容と金額の目安
助成率と上限額
2025年現在の通常制度における助成水準は以下の通りです。
・中小企業:休業手当負担額の2/3
・大企業:休業手当負担額の1/2
・1人1日あたりの上限額:8,870円(※2025年8月改定の雇用保険基本手当日額等に基づく目安)
・支給限度日数は原則として1年間で100日分、3年で150日分です。
※本制度は雇用の維持を目的としているため、解雇等を行っている場合は支給の対象外となったり、一定期間利用できなくなったりする場合があります。
※助成率や加算額は、企業の状況(解雇の有無・教育訓練の実施率・支給日数など)によって変動する場合があります。
教育訓練による加算
従業員を単に休ませるのではなく、その期間中に職業に関する教育訓練(研修など)を実施した場合、助成額に加算がつきます。
中小企業の場合、1人1日あたり1,200円が加算されるため、従業員のスキルアップと助成金の最大化を両立する手段として有効です。
まとめ
現在の雇用調整助成金は、事前の計画策定や厳格な売上要件のクリアが求められる制度となっています。
「後から申請すればもらえる」ものではなく、「計画的に雇用維持に取り組んだ企業を後押しする」制度です。
特に生産指標の確認や残業相殺の計算は複雑であり、自己判断での申請は不支給のリスクも伴います。
諏訪労務管理センターでは、地域企業の皆様の雇用維持を第一に考え、最新の法令に基づいた正確な申請サポートを行っております。
制度の活用をご検討の際は、まずは一度ご相談ください。