会社を退職した従業員に対して失業手当(雇用保険の基本手当)の手続きを進めてもらうためには、企業側が「離職票」を適切に発行する必要があります。
しかし、実務の現場では「いつまでに発行すべきなのか」「発行が遅れると問題になるのか」「労働基準監督署に相談されるのではないか」といった不安を抱える企業も少なくありません。
退職後2週間以上経過しても離職票が交付されない場合、元従業員から労働基準監督署への相談を示唆されるケースもあります。
では、離職票の発行に関して、労働基準監督署はどこまで関与できるのでしょうか。
今回は、企業の人事・労務担当者向けに、離職票発行の基本ルールと、労働基準監督署の関与範囲、適切な対応について解説します。
労働基準監督署へ離職票の相談をしたら何をしてくれるか
離職票に関するトラブルが発生した場合、「労働基準監督署に相談されるのではないか」と不安に感じる企業も多いでしょう。
労働基準監督署は労働関係法令の監督機関であり、企業にとって身近な存在です。
しかし、離職票の発行については、その役割を正しく理解しておく必要があります。
対処法のアドバイスをもらえる
労働基準監督署に相談が寄せられた場合、監督署は当事者から状況を聴き取り、一般的な制度説明や相談先について案内を行います。
ただし、これはあくまで一般的な助言にとどまり、企業に対して直接是正を求めるものではありません。
そのため、企業としては「労基署から指導が入る」と過度に警戒する必要はありませんが、正しい手続きを理解しておくことは重要です。
会社への直接指導はできない
重要な点として、離職票の発行手続きについて、労働基準監督署が企業に対して直接「発行しなさい」と指導や命令を行う権限はありません。
これは、離職票の交付義務が労働基準法ではなく、雇用保険法に基づくものであるためです。
そのため、離職票の未発行や遅延について、労基署から是正勧告が出ることは原則としてありません。
管轄はハローワーク
離職票の発行や雇用保険の手続きは、雇用保険法に基づき、ハローワーク(公共職業安定所)が管轄しています。
企業は、退職者が発生した場合、原則として退職日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出し、その後、離職票を交付する流れとなります。
そのため、離職票に関する問い合わせや是正要請があった場合、実務上の窓口はハローワークとなる点を押さえておく必要があります。

労基署で解決しない場合はどうすべきか
離職票の発行が遅れている場合、企業としては以下の対応を取ることが望まれます。
ハローワークに相談する
離職票に関する実務的な判断に迷う場合は、企業側から管轄のハローワークに事前相談することが有効です。
記載内容に不安がある場合や、特定理由離職者に該当するか判断が難しい場合でも、ハローワークから具体的な指示を受けることができます。
適切に連携することで、元従業員とのトラブル防止にも繋がります。
弁護士に相談する
離職票の記載内容を巡って紛争性が高い場合や、解雇・雇止めを伴う退職で法的リスクがある場合には、弁護士への相談も検討すべきです。
特に、離職理由の記載は失業給付の受給条件に直結するため、誤った記載は企業側のリスクとなり得ます。
専門家の助言を受けながら慎重に対応することが重要です。

まとめ
離職票は、退職者の失業給付手続きに不可欠な書類であり、企業には適切な時期に正確な内容で発行する実務上の責任があります。
一方で、離職票の発行手続きは労働基準監督署の管轄ではなく、雇用保険法に基づきハローワークが所管しています。
そのため、労基署への相談を過度に恐れる必要はありませんが、ハローワークとの連携や社内手続きの整備は欠かせません。
離職票の発行期限、記載事項、離職理由の判断を正しく理解し、企業として一貫した対応を行うことが、不要なトラブルを防ぐ鍵となります。
諏訪労務管理センターでは、離職票の作成・提出をはじめ、雇用保険手続き全般や人事・労務管理の実務支援を行っています。
離職票の取り扱いや退職時の対応に不安がある場合は、ぜひ専門家へご相談ください。