奨学金の返済は、社会人になったばかりの方にとって大きな経済的負担となりがちです。
実際に、大学などに進学した学生の約3人に1人が奨学金を利用していると言われ、卒業後の生活に重くのしかかるケースも少なくありません。
こうした状況を背景に、近年、従業員の奨学金返済を会社が肩代わりする「奨学金代理返済制度」という福利厚生に注目が集まっています。
この制度を導入する企業は年々増加しており、若手人材を支援する新しいかたちとして広がりを見せています。
今回は、この企業の奨学金代理返済制度とはどのようなものか、その仕組みや利用方法についてご紹介します。
企業の奨学金代理返済とは何か
企業がJASSOへ直接送金する制度
企業の奨学金代理返済制度は、正式には「奨学金返還支援(代理返還)制度」と呼ばれています。
これは、従業員が返済すべき奨学金を、勤務先の企業が従業員に代わって日本学生支援機構(JASSO)へ直接送金する仕組みです。
2021年4月から始まったこの制度は、従業員の経済的負担を軽減することで人材の確保や定着に繋がるとして、導入する企業が急速に増えています。
令和6年10月末時点では、全国で2,500社以上がこの制度を導入しています。
重要なポイントは、企業が従業員に手当として現金を支給するのではなく、JASSOへ「直接送金する」という点です。
これにより、従業員にとっては大きなメリットが生まれます。
経済的負担が減り所得税も非課税
この制度を利用する従業員にとって最大のメリットは、何と言っても経済的な負担が軽くなることです。
毎月の返済額の一部または全額を企業が負担してくれるため、その分だけ手取り収入が実質的に増加します。
これにより生活にゆとりが生まれ、将来のための貯蓄や自己投資に資金を回しやすくなるでしょう。
経済的な安心感は、精神的な安定にも繋がり、仕事への集中力やモチベーションの向上も期待できます。
さらに、税金面でのメリットも非常に大きいです。
企業からJASSOへ直接送金される支援額は、従業員の給与所得とは見なされないため、所得税が課税されません。
また、社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額の報酬にも原則として含まれないため、社会保険料の負担が増える心配もありません。
手当として支給される場合と比べて、支援の恩恵を最大限に受けられるのがこの制度の大きな特徴です。
途中退職のリスクや課税形式の注意点
多くのメリットがある一方で、利用する際にはいくつか注意すべき点もあります。
もし企業がJASSOへ直接送金する「代理返済」ではなく、「奨学金返済手当」などの名目で給与に上乗せして現金を支給する場合、その手当は給与所得とみなされ、所得税や社会保険料の課税対象となります。
この場合、支援額面通りの金額が手元に残るわけではないため、どのような形式で支援が行われるのかを事前に確認することが大切です。

代理返済制度の利用方法は
JASSOのサイトで導入企業を検索
ご自身の勤務先がこの制度を導入しているかどうかが最初の確認事項ですが、これから就職や転職を考えている方は、制度の有無を企業選びの基準の一つにすることもできます。
どの企業が制度を導入しているかは、日本学生支援機構(JASSO)の公式サイトで検索することが可能です。
サイトでは、地域(都道府県)や業種、企業名といった条件で絞り込んで探せるため、希望する業界や地域で制度を導入している企業を簡単に見つけられます。
企業の詳細情報や支援要件なども確認できる場合があるので、ぜひ活用してみてください。
企業への申請と証明書の提出が必要
実際に勤務先で制度を利用したい場合、まずは社内の担当部署(人事部や総務部など)に利用を申請する必要があります。
その際、多くの場合で「奨学金返還証明書」の提出を求められます。
この証明書は、ご自身がJASSOの奨学金をどれくらい借りていて、あとどれくらいの返済額が残っているかを証明する公式な書類です。
JASSOに申請すれば発行してもらえます。
企業はこの証明書をもとに、あなたの奨学金の状況を正確に把握し、具体的な支援額や期間を決定します。
手続きの詳細は企業によって異なるため、まずは社内規定を確認するか、担当部署に問い合わせてみましょう。
支援対象や期間など企業の条件を確認
奨学金代理返済制度の支援内容は、全ての企業で一律というわけではありません。
支援を受けられる条件は、それぞれの企業が独自に定めています。
そのため、利用を検討する際には、以下の点などを事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
・対象となる奨学金の種類
JASSOの第一種・第二種奨学金が対象となるのが一般的です。
・支援額
月々の上限額や、支援を受けられる総額が定められている場合があります。
・支援期間
入社後5年間、30歳までなど、期間に制限が設けられていることが多いです。
・対象従業員
正社員のみが対象、勤続年数の条件があるなど、雇用形態や社歴が問われることもあります。
これらの条件は、就業規則や福利厚生に関する規定に明記されているはずです。
自分の状況が支援の対象になるか、どのような支援を受けられるのかを事前に把握しておきましょう。

まとめ
企業の奨学金代理返済制度は、企業が従業員に代わってJASSOへ直接返済することで、従業員の経済的負担を非課税で軽減できる画期的な仕組みです。
従業員にとっては生活の安定やキャリア形成への集中に繋がり、企業にとっては優秀な人材の確保や定着率向上というメリットがあります。
この制度を利用したい方は、JASSOの公式サイトで導入企業を探したり、勤務先の制度を確認したりすることから始めましょう。
その際には、支援の対象となる奨学金の種類や支援額、期間といった企業の定める条件をしっかりと確認することが大切です。
奨学金の返済に悩んでいる方にとって、この制度は将来設計を考える上で非常に心強い選択肢となるでしょう。
代理返還制度の手続きや、申請に伴う書類作成などでお困りのことがあれば、諏訪労務管理センターまでお気軽にご相談ください。
複雑な制度もわかりやすくサポートし、スムーズな手続きをお手伝いいたします。